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ステントグラフトの応用拡大へ
大動脈治療の新たな可能性

大動脈は、心臓から酸素を豊富に含んだ血液を送り出し、脳や腕に枝分かれして、全身に酸素を含んだ血液を供給している主要な動脈です。その大動脈には、加齢や喫煙、遺伝的要因により、大動脈瘤(動脈が異常に大きく膨らんで弱った状態)や大動脈解離(血管壁の断裂)が発生することがあります。大動脈疾患は進行すると破裂につながり、死に至ってしまう非常に重篤な病気です。大動脈疾患の治療は、動脈瘤の拡大や、解離の進行を防ぐことで破裂しないようにすることが重要になります。

現在でも主流の治療法の一つである開胸手術は、大動脈の病変部を人工血管に置き換えることで破裂を防ぐ方法です。この開胸手術には50年以上の長い歴史があり、さまざまな研究で安定した成績が得られている術式です。一方、昨今では低侵襲(患者さんの身体的負担が少ない)に治療が可能なステントグラフト挿入術が増えてきています。この治療法では開胸せず、ステントグラフトという圧縮された人工血管が内部に収容されたカテーテルを、下肢の動脈から挿入します。大動脈疾患部分にステントグラフトを留置することで、瘤の拡大や解離の進行を防ぐ手術です。この手術は開胸手術に比べて低侵襲のため、入退院期間が短く術後回復が早いのが特長です。

人工血管とステントグラフト
ハイブリッド技術で患者さんの治療効果に貢献

大動脈疾患の中には、開胸手術でも医師がアクセスできない部分に疾患が及ぶ患者には、手術を数か月間隔で2段階に分ける場合もあります(下図参照)。テルモの3つのカンパニーの1つ、心臓血管カンパニーにおいて大動脈治療領域を担うTerumo Aorticは、そういった大動脈疾患の治療を一度の手術で完結できるように、ステントグラフト治療と外科治療を組み合わせた、ハイブリッド型のフローズンエレファントトランクを2012年に世界で初めて開発しました。Terumo Aorticは、この患者さんの人生を変えるユニークな技術が評価され、2016年に英国ビジネス分野で最高栄誉とされる「英国女王賞」(The Queen's Awards for Enterprise)のイノベーション部門賞を受賞しています。

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大動脈疾患の治療に変革を―
多様な病態に対応するソリューションを提供

Terumo Aorticは、2018年4月に組織統合されたバスクテック社(Vascutek, Ltd.)とボルトンメディカル社(Bolton Medical, Inc.)の2社で構成されています。バスクテック社は2002年から、ボルトンメディカル社は2017年からテルモのグループ会社です。Terumo Aorticのビジョンは、新しい外科手術、ハイブリッド、血管内治療技術の進化を促進し、複雑な大動脈の病態を治療するためのカスタムソリューションを統合するとともに、大動脈治療領域で最も包括的なデバイスポートフォリオを提供するための革新的でユニークな製品を継続的に開発することを目指しています。さらに今後は、デジタル技術の開発を通じて、より多様な手技に対応可能な製品ポートフォリオを充実していきます。