販売後の技術的課題を克服するも
厳しい市場状況の中、プロジェクト終焉へ
当時、テルモでは人体に影響を与えるリスクが最も高い、クラスⅣの医療機器の商品化経験はなく、日本では、開発環境も整っていませんでした。一方、米国では、国策として医療を産業の柱とし医療機器の開発を進めていたことから、開発に必要な技術や人材などの環境が整っていました。その状況下から、テルモでは、患者さんのためにいち早く実用化を進めるために、2000年に開発拠点を米国へ移したのです。
その後、2004年1月に欧州で、続けて米国や日本でも、テルモの補助人工心臓の臨床試験を開始。さまざまな課題に直面しながら、臨床試験を続け、ついに2007年に欧州で、そして2011年に日本で、植込み型左心補助人工心臓システムの販売が開始されました。しかし、ポンプの通常の回転モード(磁気浮上方式)が維持されないという不具合が発生したことから、同年、国内での新規植込みを一時見合わせることになりました。
2013年7月、改良を重ね、国内で製品販売を再開しましたが、電子部品の調達や製品の供給、機器の保守を確実に対応できる期間にも物理的な限界があることから、2017年3月末をもって植込みに関連する製品の供給を終了することを関連施設に対してアナウンスしました。一方、欧米においても、競合他社との競争は厳しく、2012年には欧州での販売終了、米国での治験の中断を決めました。初代のものよりもさらに小型にした次世代機の開発も進んでいたものの、2013年にその技術を他社に売却し開発事業は終了を迎えます。
現在、植込み型左心補助人工心臓システムを装着した患者さんは2名(2021年3月現在)いらっしゃいます。テルモは、患者さんが製品を必要としなくなる日まで、これまでと同様にサポートを続けていきます。