持続インスリン皮下注入療法
患者さんの抱える悩みとは
日本の糖尿病患者さんの数は328万人を超え(厚労省2017年患者調査)、現在も増加を続けています。その中でも、自己免疫障害などが原因でインスリンが分泌されない1型糖尿病の患者さんと、遺伝や生活習慣などが原因の2型糖尿病の患者さんの一部は、日常的なインスリンの注射を必要とします。
インスリンの注射は、1日数回、専用の注射デバイスを用いて患者さん自身で行いますが、薬の持続性や、注射するタイミングの管理が欠かせません。特に1型糖尿病の場合はインスリンが分泌されないため、頻回の投与が求められます。その煩雑さを解消するため、携帯ポンプを装着し、皮下に留置したプラスチック製の細い針(カニューレ)を通じてインスリンを持続的に注入する、持続インスリン皮下注入療法(CSII; continuous subcutaneous insulin infusion)を行うことがあります。
CSIIは、頻回の投与と比べて合併症リスクを抑制できることから、欧米を中心に普及が進んでいますが、日本では1型糖尿病患者さん10万人のうち1割程度とまだあまり普及していません。1年以内にこの治療を中断した患者さんに対してテルモが行った調査では、「ポンプを携帯するのが邪魔」、「合併症や投与トラブル」、「クラブ活動などで長時間外さなくてはならず生活パターンに合わない」といった理由が挙げられています(テルモ調べ)。
1型糖尿病は若年層で女性の患者さんも多く、CSIIを実施しながら就職や出産・育児などのライフイベントを迎えることも少なくありません。一方で、糖尿病患者さんに対する誤った理解や偏見から、病気のことを言えず、悩みを抱えて生活している人もいます。ポンプを用いて治療を行いながら生活することは、身体的な負担だけではなく、心理的な負担も伴い、社会問題として注目されつつあります。