ブラジルでは、いまだ新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の特効薬がない中で、感染者数の増加も歯止めがかかっていません。症状が重症化した患者さんは入院し、集中治療を受けることが必要です。大勢の患者さんを受け入れる体制整備が求められる中、この切迫した医療設備不足に対応するためにブラジルの連邦、州、市政府と国を挙げて、スタジアム、体育館、公園などの各地で仮設病院を設立し、短期間で新型コロナウイルスの患者さんを受け入れるための病床を約15,000床確保しました。
ブラジルの緊急医療を支えるべく、テルモでは集中治療室(ICU)での薬剤投与に欠かせない輸液ポンプとその使用方法のトレーニングをタイムリーに提供する取り組みに力を入れています。
サッカースタジアムに仮設病院、超短期間での薬剤投与設備をサポート
サンパウロは、ブラジルの南東部に位置する人口約1,200万人の巨大都市です。そして、今回の感染流行の中心地でもあります。サンパウロにあるパカエンブスタジアムは、1950年ブラジルワールドカップの試合も行われた歴史ある地です。そして、そのサッカーピッチ上に、市内の病院や医療施設から救急車で搬送された患者さんを受け入れるための仮設病院が開設されました。建設プロジェクトは急ピッチで進み、3月21日の建設開始からわずか11日後には、無事200病床が整備されました。
パカエンブスタジアムの仮設ICU
画像提供:Folhapress
このICUには、テルモの輸液ポンプが100台以上設置されました。輸液ポンプとは、患者さんの容体を安定させるための薬剤を制御して静脈に注入するための医療機器です。しかし、生命に直結する機器であるため、これらの製品は急いで納品すれば終わりではなく、開設されるまでの短期間で、医療従事者に安全に使ってもらうための使用方法トレーニングまで行わなくてはなりません。テルモの現地拠点であるテルモメディカルブラジル社(TMB)のアソシエイトは工夫して、仮設病院が完成するまでに、医師、看護師、救急隊員など全スタッフへのトレーニングを完遂させました。通常のトレーニングに加えて、動画版マニュアルを制作し、医療従事者がそれぞれの携帯で確認できるように配信するなど、この緊急事態だからこそ従来の形にとらわれない取り組みにも挑戦できました。
動画版マニュアルの撮影
治療を継続するための支援
今もなお、ブラジルの医療施設では新型コロナウイルスとの闘いが繰り広げられています。テルモも、医療現場が必要としている支援をいつでも行えるよう臨戦態勢を維持しています。例えば、新型コロナウイルス罹患者受け入れ病院の多くは院内環境の安全確保や感染拡大を防ぐために、ロックダウンならぬ「ロックドア(Locked door)」方針により、施設全体が関係者以外立ち入り禁止になっています。そのなかで、輸液ポンプのトラブルが起きた時に見られるポケットマニュアルの配布や、すぐに疑問点に答えられるよう遠隔サポートホットラインなども設けています。
輸液ポンプのトレーニング風景
安心安全の医療が途絶えることのないように尽くし、「医療を通じて社会に貢献する」の企業理念を日々胸に活動しています。