足の疲れと足のむくみの因果関係はあるの?

監修:中村 和美 先生 / 上大岡静脈瘤クリニック

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  • #むくみ
  • #セルフチェック

夕方になると足がだるく重くなり、「早く靴を脱ぎたい!」と思うことはありませんか。翌朝をスッキリと迎えるためにも、つらい足の疲れを上手にリセットしたいものですよね。足が疲れたりむくんだりするのには何か理由があるのでしょうか。

目次

  • 1. なぜ足が疲れるの?
  • 2. なぜ足はむくみやすいの?
  • 3. 足の疲れを取る方法やグッズを紹介
  • 4. 弾性ストッキングもむくみにGOOD!
  • 5. ちょっとした工夫で足の疲れを取って快適に
  • 1. なぜ足が疲れるの?

    足がだるく重くなったり、むくんだりするとき、私たちは「足が疲れた」と表現します。 正しく足の疲れ対策をするために、まずは原因やメカニズムを知っておきましょう。

    1-1. 足は心臓から一番遠い

    私たちの体では、心臓から送り出された血液が動脈を通って全身を巡り、静脈を通って再び心臓へと戻ってきます。

    足の静脈は、常に重力に逆らって、上へ上へと血液を送らなくてはなりません。足は体の下の方にあるため、心臓まで静脈血を送るためにはパワーが必要です。血液を押し上げる力が足りないと血流が悪くなり、むくみやだるさの発生につながります。

    夕方になるとある程度足がむくんだり、だるさ・重さを感じたりするのはごく自然なことだといえるでしょう。

    • ふくらはぎは「第二の心臓」

      下肢の静脈の血液が心臓まで戻るためには、次の2つの力が必要です。

      1.心臓が静脈血を引き戻す力
      2.筋肉や組織が動いてポンプのように静脈血を押し上げる力(筋ポンプ作用)

      足の疲れやむくみに大きく影響するのは、2つめの「筋ポンプ作用」です。私たちが足を動かすと、筋肉が伸び縮みして静脈を圧迫し、ポンプのように血液を押し上げます。足の中でも特に強力な筋ポンプは、ふくらはぎにあるヒラメ筋と腓腹筋(ひふくきん)です。そのため、ふくらはぎは「第二の心臓」と呼ばれています。

    1-2. 筋肉量が少ない

    一般的に男性よりも女性の方が足の疲れを訴えがちですが、これには筋肉量が関係しています。筋ポンプ作用は筋力に左右されるため、男性に比べて筋肉量が少ない女性はポンプ機能の効率が悪く、血流が滞りやすいのです。逆に筋肉が発達しているアスリートは、一般の人よりも筋ポンプ作用が強く、疲れにくいといわれています。

    1-3. ライフスタイルが影響

    足の疲れにはライフスタイルも影響します。例えば立ち仕事やデスクワークなどで長時間同じ姿勢を続けていると、足を動かさないため筋ポンプ作用が働かず、血液を心臓までスムーズに戻せません。すると血液が滞り(うっ血)、疲れやむくみが起こりやすくなります。

    同じように、運動不足だと筋ポンプ作用が十分に働かないため、足がうっ血しやすくなります。さらに筋肉自体も細く弱くなり、筋ポンプ作用の効率がダウンしてしまいます。

  • 2. なぜ足はむくみやすいの?

    むくみを自覚している人は、男性よりも女性に多いことがわかっています。

    2-1. そもそも「むくみ」とは

    むくみとは皮膚の下に余分な水分が溜まった状態のことで、医学用語では「浮腫(ふしゅ)」といいます。私たちの体には体重の約6割の水分があり、通常は身体の場所ごとに、水分のあるべき場所が決まっています。そして毛細血管の壁に空いたごく小さな穴から常に水分を出し入れして、バランスを保っているのです。

    ところが何らかの事情で水分を出し入れするバランスが狂うと、行き場をなくした水分が皮膚の下に過剰に溜まります。これがむくみの正体です。

    • 水分補給をしないのはNG

      むくみの原因は、「バランスを崩して皮膚の下に溜まった過剰な水分」ですが、むくみを気にして水分を控える必要はありません。人間の体はよくできていて、水を飲み過ぎても腎臓の働きで尿として排出されます。水分摂取を控えすぎると、尿量を少なくして体が水分をため込もうとするため、かえってむくむ場合もあるので注意が必要です。

      そうは言っても、あまりにも多い水分摂取はおすすめできません。一度に大量の水分を摂取しても腎臓が働いて水分バランスを調節しますが、それには2~3日の時間がかかるため、その間はむくみが出ます。

      むくみを予防したい場合は塩分を控え、1日1.2リットルを目安に適量の水分をとりましょう。なお、カフェインを含む飲み物は利尿作用があるため、水分補給には向きません。水や麦茶などノンカフェインのものを選びましょう。

    • 一般的なむくみと病気のむくみの違い

      むくみは健康な人にもあらわれますが、病気が原因で起こる可能性もあります。一般的なむくみが一晩寝れば解消するのに対して、病気のむくみである「浮腫」は寝ても解消しません。10~30秒押したときに皮膚がへこんだままになり、戻るまで時間がかかれば浮腫の可能性があります。

      翌朝になっても解消されないむくみや左右差のあるむくみ、食欲不振や動悸・息切れといった全身症状を伴うむくみには要注意です。気になる症状が続く場合は、内科などへの受診をおすすめします。

    • リンパを流すとむくみは解消されるの?

      「リンパ(リンパ液)」とは、毛細血管から漏れ出る水分のことです。実は足のむくみに関しては、体液の循環でリンパの役割はそれほど大きくありません。毛細血管から漏れ出た水分の多くは再び静脈に吸収されるため、リンパ管に回収されるのは全体の1割程度です。そのためむくみ対策には、リンパよりも静脈の流れをよくし、筋ポンプ作用を働かせる方が効率的だといえます。

    2-2. そもそも女性はむくみやすい

    女性は男性よりも筋肉量が少ないため、血流が滞ってむくみが出やすいのですが、むくみの原因には、女性ホルモンの影響も見逃せません。例えば生理前や生理中は、プロゲステロンという女性ホルモンの影響で体が水分をため込もうとするため、むくみやすくなります。妊娠中も同様に、体重増加や赤ちゃんの重さがおなかの大きな静脈を圧迫することで、むくみやすさはさらに増します。

    2-3. 体質や仕事が影響

    むくみやすさには体質や仕事も影響しています。まず体質として、低血圧の人は「心臓が静脈血を引き戻す力」が弱いため血流が滞りやすく、むくみやすい傾向があります。また太っている人は、常に心臓に負担がかかっている状態です。そのため低血圧の人と同じように、心臓が静脈血を十分に引き戻すことができず、むくみやすくなります。

    加えて立ち仕事の人や、きつい下着・窮屈なパンプスで体を締め付けている人はむくみやすいといえます。特にガードルやボディスーツなど、体の一部を強く締め付ける下着には要注意。締め付けた部分より先がむくみやすくなるため、かえって足のむくみが目立ちます。

  • 3. 足の疲れを取る方法やグッズを紹介

    足の疲れを感じたときはセルフケアを試してみましょう。手軽にできるケア方法や、足の疲れを取るグッズのほか、事前に対策できる方法を紹介します。

    3-1. 足が疲れたらマッサージやストレッチを

    足の疲れは、足に溜まった静脈血が心臓までスムーズに戻らず、血流が悪くなっているときに起こります。マッサージやストレッチをして、血液の流れをサポートしましょう。

    マッサージは足の指から心臓に向けて行い、特に足首やふくらはぎをしっかりもみ上げます。お風呂上がりや足湯の後など、血管が広がって血流が良くなっているときに行うと効率がアップするのでおすすめです。

    さらに、足首やふくらはぎの筋肉を動かすストレッチで、筋ポンプ作用の働きを高めましょう。

    寝るときは足の静脈血が心臓まで戻りやすくなるように、足を高くするとよいでしょう。

    • マッサージローラーなどのグッズでマッサージするのもGOOD

      コロナ禍で在宅ワークが増えたこともあり、デスクワークのむくみ対策としてさまざまなグッズが人気を集めています。おすすめは皮膚の上にあてて使う「マッサージローラー」や、自重をかけて体をほぐす「フォームローラー(筋膜リリースローラー)」などです。マッサージやストレッチがなかなか続かない人は試してみてはいかがでしょうか。

    3-2. 仕事の合間には足首の上下運動を

    同じ姿勢を長時間続けていると、筋ポンプ作用が働かないために足の血流が悪くなって、疲れ・むくみが出やすくなります。デスクワークや立ち仕事の合間には、積極的に足首を動かしましょう。

    やり方は簡単です。まずは椅子に座った状態でかかとをつけ、つま先を上にグッと上げます。次につま先を床につけ、かかとを持ち上げてください。この動きを10回程度繰り返しましょう。ふくらはぎの筋肉がしっかり動くように、力強く行うのがポイントですよ。

    3-3. 休憩中は足を高くする

    立ったり座ったりしているときは、足が心臓よりも低い位置にあるため、重力の影響でむくみやすくなります。そのため休憩中は足を高くして重力の影響を小さくし、血液が心臓方向に流れやすくなるように工夫しましょう。

    可能であれば、仰向けになって足を高くします。椅子をもう一つ用意してクッションなどを乗せ、足を水平よりも少し高くするのも良いでしょう。

  • 4. 弾性ストッキングもむくみにGOOD!

    医療機器である弾性ストッキングは一般的な着圧ストッキングよりも圧力が強く、編み方も特殊です。足首の圧力が最も強く、太ももに向かってだんだんと弱くなる「段階的圧迫圧」で編んであります。この構造は、足の静脈血を心臓へと押し上げる筋ポンプ作用を増強する効果があります。

    ハイソックスやパンティストッキングなどさまざまな形のものがあります。圧力の強さも商品によって異なるため、シーンや履き心地の好みに合わせて選ぶことができます。

    疲れやだるさが出てからではなく、症状が出ないよう予防的に履くのがおすすめです。基本的には医師の処方で使用するため、むくみがひどい人は血管外科などで相談してみると良いでしょう。

  • 5. ちょっとした工夫で足の疲れを取って快適に

    足は心臓よりも低い位置にあるため、血流が悪くなりやすい部分です。疲れやむくみが出るのは自然なことですが、毎日の生活に運動やマッサージなどを取り入れることで対策できます。また、適度に体を動かして活発に日常生活を送ることは、それだけでも足の疲れ・むくみ対策になります。ライフスタイルに合わせた無理のない方法で、日々の足の疲れをケアしましょう。

<参考文献>

  • 1)岩井武尚 監修, 孟 真, 佐久田 斉 編集:新 弾性ストッキング・コンダクター〔第2版 増補版〕静脈疾患・リンパ浮腫における圧迫療法の基礎と臨床応用 株式会社へるす出版, 2020
  • 2)平井正文, 廣田彰男, 中村正人, 鈴木加奈子:むくみ体質をあきらめない―医師が教える改善の知恵 株式会社メディカルトリビューン, 2010
  • 3)日本静脈学会 編集:新臨床静脈学, メジカルビュー, 2019
  • 4)厚生労働省ホームページ 厚生労働省「2019年国民生活基礎調査の概況」第9表(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/dl/14.pdf)(2022年6月30日に利用)
  • 5)厚生労働省ホームページ「健康のため水を飲もう」推進運動「健康のため水を飲もう」推進運動 (mhlw.go.jp)(2022年6月30日に利用)

監修者紹介

中村 和美 先生

上大岡静脈瘤クリニック 院長

高知医科大学(現 高知大学)医学部卒。
千葉県循環器病センター、 高知大学医学部附属病院、お茶の水血管外科クリニック、横浜南共済病院などを経て、2021年 上大岡静脈瘤クリニックを開業。
脈管専門医、下肢静脈瘤に対する血管内焼灼術の実施基準による指導医、弾性ストッキング・圧迫療法コンダクター

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