健康は足から!毎日のフットケアで足の状態を知ろう

監修:中村 和美 先生 / 上大岡静脈瘤クリニック

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「人は足(下半身)から老いる」といわれます。いくつになってもイキイキと健やかな毎日を送るためには、普段から足への意識を高めて毎日歩くことが大切です。しかしながら、むくみや疲れなどに悩んでいる人も多いですよね。一般的にむくみは一晩眠れば解消することがほとんどですが、中には病気が潜んでいるケースもあります。そこで重要になるのが毎日のフットケアです。

目次

  • 1. フットケアを習慣にしよう!
  • 2. フットケアでチェック!足の変化に気付こう
  • 3. むくみにおすすめ!正しいフットケア
  • 4. フットケアを習慣にして足元から健康に
  • 1. フットケアを習慣にしよう!

    一日中体重を支えて立ち歩いている足は、負担がかかりやすい場所です。毎日のケアで足をいたわるとともに、大きなトラブルを未然に防ぎたいものですね。

    1-1. 女性は足のトラブルを抱えやすい

    男性に比べて、女性は足のトラブルを抱えやすいことがわかっています。2009年に10代~60代の男女を対象としてインターネット調査1)を行ったところ、足のむくみを自覚している人の割合は、男性が約1割であったのに対し、女性は4割弱にのぼりました。

    女性がむくみやすい理由はいくつかあります。まずは男性に比べて筋肉量が少ないことです人間の体では、血液が心臓から動脈を通って全身に行き渡り、静脈を通って心臓まで戻っています。足の血液が心臓に戻るためには、重力に逆らって上へ上へと流れなければなりません。ここで血液をポンプのように押し上げるのが、ふくらはぎを中心とした筋肉の「筋ポンプ作用」です。女性は筋肉量が少ないため筋ポンプの働きが弱く、血液が滞りやすいこと(うっ血)から足がむくみやすいのです。

    さらに女性ホルモンの影響も小さくありません。特に生理前や生理中、妊娠中は、女性ホルモンの影響で体が水分を溜め込もうとするためむくみやすくなります。

    1-2. フットケアとは

    フットケアというと、マッサージやクリームでの保湿、爪の手入れ、ペディキュアといった美容的なことをイメージする人が多いのではないでしょうか。

    しかし医学の観点では少し違います。脈管学でのフットケアを分かりやすい言葉で説明すると、「足を見たり触ったりして、血流の異常やちょっとした変化、小さな傷などをなるべく早く見つけ、ひどくならないように対策すること」となります。マッサージやスキンケアをするときは、自分の足をすみずみまで観察し、異常がないかどうか確認することが大切です。

    1-3. フットケアの重要性

    フットケアが重要なのは、ケアのたびに自分の足を観察することで、ちょっとした変化にも気付くためです。例えばむくみは誰にでも起こる症状ですが、足の病気が原因で発症するケースもあります。

    むくみを伴う病気の代表的なものには、血管にコブのような膨らみができる「下肢静脈瘤」、深部静脈に血栓ができる「深部静脈血栓症」などがあります。
    むくみ以外にも糖尿病の合併症として、しびれや痛みが出て感覚がにぶくなる「末梢神経障害」、腰から足にかけてのしびれや痛みが出る「脊柱管狭窄症」、足の血流が悪くなる「血行障害」などが起こることも珍しくありません。

    先ほど紹介したインターネット調査の結果では、調査対象者のうち約1割がむくみを理由に病院を受診していました。足に異変が起こったときは、その影に思わぬ病気が潜んでいることもあるのです。もちろん病気ではない一時的なむくみやだるさも、フットケアで緩和できます。他にも水虫や外反母趾と言った足のトラブルも意識するようになり、足の健康につながるので、ぜひ毎日のフットケアを習慣にしましょう。

  • 2. フットケアでチェック!足の変化に気付こう

    1日1回自分の足に向き合うことは、足の健康を守る上で非常に大切です。ここでは、自分でできるチェック法を紹介します。

    2-1. 足全体を触ってじっくり見てみる

    お風呂上がりや寝る前、歯磨きの前など、フットケアをするタイミングを決めておくと習慣化しやすいでしょう。できれば足の状態を簡単にメモしておくのがおすすめです。

    まずは足を触りながら、皮膚の状態や傷の有無を観察します。指の間やかかと、足の裏も含めてくまなくチェックしましょう。肌の質感は人によって違いますが、毎日確認していれば異変があったときに気付きやすくなります。

    さらに膝から下の部分の皮膚を、指で10~30秒間押してみてください。指を離したときにへこみができればむくみがある証拠です。へこみが元に戻る時間が長いほど、むくみの程度が重いと判断できます。分かりやすいのは、靴下のゴムの跡がくっきり残っていることです。最後にクリームやオイルをつけて、足全体をマッサージしましょう。

    2-2. むくみの確認の方法

    一晩寝ると解消されるむくみは、誰にでも起こり得る一時的な現象であり、病的なものではありません。ただしむくみが病気の一症状として表れる場合もあります。一般的に病気のリスクは年齢とともに上がるので、むくみが出たときは次のポイントをチェックしておきましょう。

    • むくみが出る時間帯をチェック

      むくみが出るのが夕方や夜であり、翌朝になるとほぼ消えている場合は、病的なものではないと考えられます。逆に、朝起きたときにはっきりとわかる程度のむくみが残っているなら、病気が隠れているかもしれません。

    • むくみの場所や左右対称かをチェック

      顔や手といった足以外の場所も同時にむくんでいる場合は、病気の疑いがあります。また片足だけがむくんでいたり、むくみの程度が左右の足で違ったりする場合も要注意です。むくみが起きている側に、何らかの病気がある可能性が高いといえます。

    2-3. 気になる症状があれば受診を

    むくみには心臓や腎臓、肝臓、甲状腺などの病気、貧血や血管の病気などが隠れている可能性があります。気になることがあれば、医師に相談してみてください。病気自体の治療はもちろんですが、弾性ストッキングの着用など、むくみを緩和する方法も指導してもらえます。

    • むくみは何科で診てもらえば良いの?

      足以外にもむくみが出ているときは内科を受診しましょう。足のむくみが目立つときは血管外科を受診すると良いでしょう。病院によってはフットケア外来を設けている場合もあります。

      なお、服薬中であれば薬による副作用でむくみが出ていることも考えられるため、主治医に確認してください。受診科に迷う場合は、まずかかりつけ医に相談するのがおすすめです。

  • 3. むくみにおすすめ!正しいフットケア

    正しいフットケアを毎日の生活に取り入れて、むくみの解消を目指しましょう。ここでは手軽にできる方法を紹介します。

    3-1. 空中自転車こぎ運動

    足を心臓よりも上で動かす「空中自転車こぎ運動」をして、静脈にたまった血液が心臓へと戻るのをサポートしましょう。

    【やり方】
    1.仰向けに寝転び、足を上げる
    2.自転車をこぐイメージで、ぐるぐると足を動かす
    3.10回を1セットとし、休憩をしながら無理のない範囲で10分程度繰り返す

    3-2. 足のマッサージ

    足先から心臓方向へ、上に向かってマッサージしましょう。お風呂上がりや足浴後などの、体が温まって血管が広がっているときに行うとより効果的です。なお摩擦による皮膚のダメージを防ぐため、マッサージの前にはクリームやオイルを塗って、すべりを良くしておきましょう。

    3-3. 入浴

    入浴は、足の疲れや体のだるさを和らげる効果があります。ただし、極端な長風呂や熱いお湯での長風呂は要注意です。

    お風呂で温まると動脈の流れが良くなるため、足へ流れ込む血液の量が増えます。動脈の血液量が増えたときには、静脈の流れも良くならなければバランスが取れません。しかしお風呂の中では足が心臓よりも下にあるので、静脈血の心臓への戻りは少なり、むくみが起こりやすくなります。

    むくみ対策のためには静脈の流れを良くすることがポイント。極端な長風呂や熱過ぎるお湯を避けましょう。さらに湯船につかっている間やお湯から出たあとにマッサージやストレッチをして、静脈の流れを良くすることも大切です。

    3-4. 足を高くして寝る

    軽いむくみであれば、ほとんどの場合、横になって眠るだけで翌朝には解消します。これは寝転んでいる間は心臓と足の高さが同じくらいになるため、足の静脈血が心臓へとスムーズに流れるからです。

    翌朝まで残るようなひどいむくみがあったり、足のだるさで寝付きが悪くなっていたりするときは、足を高くして寝てみましょう。足を心臓より高い位置に保つことで、重力を利用して、血液やリンパ液の流れをスムーズにするわけです。この場合、かかとの下ではなく膝の下に座布団やクッションを入れ、足全体が高くなるようにするのがポイントです。足の位置は10cm程度高くなるように調節しましょう。

  • 4. フットケアを習慣にして足元から健康に

    足は常に体重を支えているため負担がかかりやすく、疲れやすい部分です。一日の終わりにはフットケアで働き者の足をいたわり、むくみや疲れを和らげましょう。また毎日自分の足を観察することで、ちょっとした変化にも気付きやすくなります。いつまでもフットワーク良くいきいきと過ごすために、毎日のケアをぜひ習慣にしましょう。

<参考文献>

  • 1)平井正文、廣田彰男、中村正人、鈴木加奈子:むくみ体質をあきらめない―医師が教える改善の知恵 株式会社メディカルトリビューン, 2010
  • 2)日本脈管学会 編集:臨床脈管学, 日本医学出版, 2017

監修者紹介

中村 和美 先生

上大岡静脈瘤クリニック 院長

高知医科大学(現 高知大学)医学部卒。
千葉県循環器病センター、 高知大学医学部附属病院、お茶の水血管外科クリニック、横浜南共済病院などを経て、2021年 上大岡静脈瘤クリニックを開業。
脈管専門医、下肢静脈瘤に対する血管内焼灼術の実施基準による指導医、弾性ストッキング・圧迫療法コンダクター

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