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事業活動に伴う環境負荷の低減は、持続可能な社会を実現するために企業が果たすべき社会的責任であり、また、企業の持続的な成長を支える上でも重要な取り組みです。テルモグループでは、事業活動に伴う温室効果ガス排出量や廃棄物の削減、資源の有効活用、人にも環境にもやさしい製品の開発などに取り組んでいます。

気候変動への取り組み

テルモでは、「持続可能な開発目標」(SDGs)やパリ協定などの世界的な枠組みを踏まえ、エネルギーの効率化や気候変動対策など、事業活動に伴う温室効果ガス排出量の削減を重要な課題と捉え、グループ全体で取り組みを進めています。

2015年にパリ協定が採択され、企業にも科学的根拠に基づいた温室効果ガス排出量削減目標(SBT:Science Based Targets)の策定と、目標達成に向けた取り組みが期待されています。テルモでも、国際的なイニシアチブである「SBT(Science Based Targets)イニシアチブ」が推奨する温室効果ガス排出量削減目標の策定手法を採用した2030年度を目標年度とするグループとしての削減目標を策定しています。スコープ1+2*目標については、2023年3月にSBTの認定を再取得し、2020年に認定を取得したSBT 「WB2℃水準」から「1.5℃水準」へ変更を行い、2030年度の目標を2018年度比30%削減から50.4%削減に引き上げました。また、併せて再生可能エネルギーの使用比率に関する目標を設定し、2040年のカーボンニュートラル実現を目指します。

  • SCIENCE BASED TARGETS

【テルモグループの温室効果ガス排出量削減目標】

スコープ1+2*

  • 2030年度までに、温室効果ガス排出量を2018年度比で50.4%削減
  • 2030年度までに、使用電力の再生可能エネルギー比率を50%
  • 2040年度までに、カーボンニュートラルを実現

スコープ3*

  • 2030年度までに、売上収益あたりの温室効果ガス排出量を2018年度比で60%削減
  • *

    スコープ1:直接排出(燃料燃焼などの自社の排出)        
    スコープ2:購入した電気などのエネルギー生産に伴う間接排出(電力事業者等の排出)        
    スコープ3:スコープ2以外の間接排出(原料生産、輸送、廃棄などの他社の排出)

環境・安全に配慮した製品の開発

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Human×Eco(ヒューマン・バイ・エコ)®開発指針

テルモでは、人にも環境にもやさしい製品開発を促進するための独自の基準「Human×Eco開発指針」を制定し、製品の開発にこの基準を適用しています。この指針に基づき設定された評価項目で特に優れた製品には、自社認定マーク(「Human×Eco」マーク)を表示し、お客様にも分かりやすくお伝えしています。

Human×Eco 認定製品事例

  • 輸液ポンプ ― 省資源・使いやすさ向上
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    輸液ポンプとは、輸液剤等を設定した流量で投与するための医療機器です。従来品比で当該製品の重量を約40%軽量化しました。これにより、持ち運びの際の負担を軽減するとともに、省資源、輸送効率の向上など環境への貢献が期待できます。また、当該製品の表示部分には、カラー液晶を搭載することで視認性を向上、簡単に動作履歴データを転送できる無線通信機能を付加することで、医療従事者の業務効率の向上にも貢献することが期待されます。

  • 血管内超音波診断カテーテル ― 時間短縮・効率向上
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    血管内超音波診断カテーテルは、血管内の様子を超音波で観察する血管内超音波検査(IVUS)に用いられます。画像の高精細化、画像取得・処理の高速化、操作性の向上などにより、IVUS における準備・診断・読影などの時間を短縮しました。時間短縮により、患者さん・医療従事者の負担を軽減し、より安全で効率的な治療への貢献が期待されます。

 

  • 輸液剤容器 ― 省資源・廃棄物削減
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    エコをコンセプトにした輸液剤容器です。従来の容器よりも樹脂使用量・製造工程のエネルギー消費量を削減し、製造時のCO2排出量削減も実現しました。また、容器の重量を従来品比で約23%削減しています。これにより、環境負荷の低減や廃棄重量の削減が期待できます。

  • TRI用イントロデューサーキット ― 低侵襲・医療経済性
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    心臓カテーテル治療の中でも、手首から治療する方法(TRI)は足の付け根からのカテーテル挿入と比べ、術後の出血などの合併症が少なく低侵襲治療が可能になります。シースをより薄く微細成型することで、外径を細くした新しいコンセプトのイントロデューサーキット開発しました。血管の細い患者さんへの治療選択肢の拡大、術後合併症に伴う医療費・医療資源の削減が期待されます。

 

  • ワクチン用シリンジ ― 省資源・廃棄物削減・コロナ禍での医療需要へのタイムリーな開発
    ワクチン用シリンジ

    2021年、日本では、新型コロナウイルスのワクチン接種を進めるにあたり、筋肉注射用のシリンジが早急に必要となりました。貴重なワクチンを無駄なく使用できるよう、テルモは、それまで皮下注射用のシリンジとして販売してきた薬液の残量が少ない「ローデッドボリューム」注射器の技術を生かしながら、植え込み針を16mm(従来品:13mm)と長くした筋肉注射用の新たな注射器を開発し、日本で初めてコロナワクチンの筋肉投与可能な針付きシリンジとして薬事承認を取得、開発からわずか3カ月で発売しました。針埋め込み式を採用することにより、針付きのシリンジと比較して、薬液の効率的な使用以外にも、製造に必要な樹脂量の低減に貢献します。

  • 閉鎖式輸液システム ― 輸液ライン管理の安全・効率化
    閉鎖式輸液システム

    輸液ラインの混注部をクローズドな状態で保つことにより、外気からの細菌侵入による感染防止に寄与します。混注部は、薬液滞留をなくす構造を採用し、薬剤の微量投与にも対応。注射器や点滴器具を接続する際にも専用のアダプターは不要です。簡単かつ迅速に薬液を注入できるため、操作間違いによるリスク低減などに寄与します。物品管理もしやすく、輸液ライン管理の安全と効率化に貢献します。

廃棄物の削減とリサイクル

テルモでは、リサイクルや廃棄物の最終処分量削減の目標を設定し、資源効率の向上に取り組んでいます。製品の安全性の観点から、廃棄物の社内での再生利用(マテリアルリサイクル)は困難ですが、製造工程やオフィスでの事業活動で発生するプラスチックや金属類などの廃棄物の発生抑制に努めています。また、発生した廃棄物は分別し、リサイクル会社の協力により、プラスチック製品や、固形燃料(RPF)、有機肥料などにリサイクルしています。

【中長期目標(2030年度)】

テルモグループ(国内事業所、海外生産事業所・開発拠点)の廃棄物のリサイクル率:90%以上

サーキュラーエコノミー実現に向けた取り組み

テルモでは、資源の枯渇や気候変動問題などへの対応として、サーキュラーエコノミーの実現に向けた取り組みを進めています。人にも環境にもやさしい製品開発を促進するための独自の基準「Human × Eco開発指針」を制定し、製造工程での廃棄物等の発生抑制、環境負荷の低い材料や部品の選定、製品や包装材の小型・軽量化などを推進しています。製造工程等で発生したプラスチックなどの副産物は適正に分別し、リサイクル事業者へ資源として提供することにより、文房具やパレットなど、新たなプラスチック製品として再資源化(マテリアルリサイクル)されています。また、2023年度には、テルモグループとして初めて、製品の一部に再生プラスチックを使用した製品を発売しました。

  • 再成形されたパレット

    再成形されたパレット

  • 製品の一部に再生プラスチックを使用した製品

    製品の一部に再生プラスチックを使用した製品

水資源の有効利用

テルモでは、輸液製剤等の原料として、また、製造工程において多くの水を使用しています。世界資源研究所(WRI)が開発した水リスク評価ツール「Aqueduct」を用いて、定期的に全生産事業所が位置する国・地域の水資源の状況や、水ストレスなど、水の使用におけるリスクと機会を把握しています。2022年度末時点の調査結果では、全34の生産事業所のうち、フィリピン、中国、北米、そして欧州の工場が、水ストレスの高い地域にあることを特定しています。       
テルモでは、水に関する目標を設定し、水使用量(取水量)の削減や再利用などを推進しています。具体的な取り組みとしては、使用用途別に水使用量を測定するための流量計の設置や水使用量の見える化システムを導入することで、生産プロセスにおける水資源のロスを抑制するとともに、節水型の設備の導入や冷却水等への再利用などを進めています。

【中長期目標(2030年度)】

テルモグループ(国内事業所、海外生産事業所・開発拠点)の売上収益当たりの水使用量(取水量):2018年度比20%以上削減

生物多様性保全の取り組み

テルモは、私たちの生活や健康、医療などが、多様な生物や生態系の恩恵のもとに成り立っていることを理解しています。自然の恵みを受けて事業活動を行っている企業として、環境教育や森づくり活動などを通じて生物多様性の保全に取り組み、自然共生社会の実現を目指します。

富士山森づくり

テルモは、静岡県富士宮市に2つの工場を有し、富士山麓から湧き出る地下水を利用して医療機器や医薬品などを生産しています。自然の恵みを利用して事業を行う企業として、台風で倒木などの被害を受けた富士山の森林を、郷土樹種の植林を通して、災害に強く、また地下水の源にもなる自然林に再生させる活動「テルモ富士山森づくり」を2003年度から行っています。2011年度からは、静岡県、森林所有者、テルモの三者で「しずおか未来の森サポーター協定」を締結し、富士宮市麓地区の「テルモ恵みの森」において植林や森林整備を実施しており、「資源」「生物」「交流」「健康」をコンセプトに年間を通じて森づくり活動を推進しています。

活動の様子
活動の様子

「エコチャレンジ」

アソシエイトがオフィスや家庭で環境に良い活動に自主的に取り組む「エコチャレンジ」を実施しています。2022年度は約2,900人が参加し、CO2の削減につながる省エネや省資源等の7つの活動や、カーボンニュートラルに関する教育に取り組みました。また、その成果をポイント化し、金額に換算した上で、公益財団法人オイスカの「子供の森」計画(フィリピン)と東日本大震災復興海岸林再生プロジェクトの2つのプログラムにテルモとして寄付を行いました。

海外拠点の取り組み

日本だけでなく、海外の各拠点でもリサイクル意識向上のためのイベントの開催や植樹活動により生物多様性保全への取り組みを行っています。2022年度は、テルモフィリピン社でラグナ州のカリラヤ・ルモット流域森林保護区での植樹活動、テルモベトナム社ではファミリーデーを開催し、300組以上の家族、計1,000人以上の参加者でリサイクル材料を使ったおもちゃ作りなどを実施し、森林保全や環境教育を通じた環境負荷低減への取り組みを実施しています。

詳しくはテルモレポート(環境)をご覧ください。