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 テルモ株式会社(本社:東京都渋谷区、社長:佐藤 慎次郎)は、薬剤溶出冠動脈ステントのアルチマスター*1を留置した出血性合併症リスクの高い患者さんにおいて、最適な抗血小板療法を検証するための臨床試験「MASTER DAPT」の結果が発表されたことをお知らせします。

 MASTER DAPT試験は、欧州、日本、アジア、オーストラリア、南米地域の30か国、140施設が参加した大規模臨床試験であり、二剤抗血小板療法(DAPT)を1か月に短縮することによる臨床的メリットが示唆されました。本試験の結果は、8月27日から30日に開催されたEuropean Society of Cardiology 2021(欧州心臓病学会)での発表と同時に、New England Journal of Medicine誌、およびCirculation誌にもサブグループ解析論文が公表されています。

 心筋梗塞や虚血性心疾患の治療で血管内にステントを留置した後は、ステント血栓症を予防するために抗血小板薬を2剤服用することが必要です。しかし、抗血小板薬を多く服用することにより、皮下出血や失血などの「出血性合併症」のリスクが上昇してしまうため、DAPTの期間の短縮が求められています。特に、75歳以上の高齢者や、他の疾患を併せ持つため長期間経口抗凝固薬を服用している患者さんにおいては、出血性合併症の発生リスクが高いとされています。

 MASTER DAPT (MAnagement of high bleeding risk patients post bioresorbable polymer coated STEnt implantation with an abbReviated versus prolonged DAPT regimen)試験では、アルチマスターを留置した出血性合併症リスクの高い患者さんを4,579名登録し、1か月(30日)が経過した時点で、2剤処方している抗血小板薬を単剤処方に切り替えDAPTを短縮した群(=2,295名)と、さらに最低2か月以上DAPTを継続する群(=2,284名)に無作為で割り振りました。

 割付から335日経過した時点での両群の安全性と有効性を比較したところ、いずれも良好な結果でした。有害事象*2の発生率では、DAPTを短縮した群は継続した群と比べて劣っていませんでした。また、出血関連の事象発生率においては、DAPT短縮群で優位性が示されました。この結果は、アルチマスターを留置した出血性合併症リスクの高い患者さんにおいて、DAPTの短縮は予後の改善につながることを示唆しています。

 本臨床試験を主導したMarco Valgimigli医師(スイス、ベルン大学病院)は、「今回の試験には、急性冠症候群や多枝疾患など複雑な症例も登録されており、冠動脈カテーテル治療の日常臨床を反映している。出血性合併症の高リスク患者において、アルチマスター留置後1か月でDAPTを打ち切ると、薬剤溶出ステントの有効性を発揮しつつ、出血性合併症のリスクを低減できることが臨床的に示された。1か月DAPTは、新しいスタンダードになるだろう」とコメントしています。

 アルチマスターは、コーティングの材料として生分解性ポリマーを採用するとともに、ポリマーと薬剤を血管組織に接する面にのみ塗布をしています。これによって、薬剤溶出ステントを留置する目的の一つである病変部の再狭窄を抑制しつつ、血管内での早期の被覆化につながり、DAPTの期間短縮が期待されています。

 現在アルチマスターを留置した症例において、5万人以上の患者さんを対象として、早期被覆化やステント血栓症発生率などを検証する各種臨床試験が発表されています。DAPT期間を短縮できることは、出血性合併症を低減させ、より安全で有効な治療につながると考えられます。また、薬剤の過剰処方防止や、出血性合併症による入院日数の削減など、貴重な医療資源の有効活用への寄与も期待されています。

 心臓血管カンパニープレジデントの長田敏彦は、「今回このような臨床的に価値の高い研究に参画できたことを光栄に思います。今後もカテーテル治療の発展のために、企業としてよりよい製品やサービスの提供はもちろん、エビデンス構築の活動に対しても支援していく所存です。」 とコメントしています。

 本プレスリリースは、テルモの子会社であるTerumo Europe NVが8月30日に発表した内容の一部を和訳・編集したものです。
原文は https://www.terumo.com/pressrelease/detail/20210830/639/index.html をご覧ください。

  • *1

    2018年に発売した「Ultimaster Tansei」も含まれます。アルチマスターは、欧州では2014年、日本では2015年に販売を開始した薬剤溶出冠動脈ステントです。2018年には、デリバリーシステム(カテーテルの先端とシャフト)を改良したUltimaster Tanseiを発売しています。

  • *2

    MASTER DAPTで研究対象としている有害事象は、出血性合併症の発生や死亡、心筋梗塞、脳卒中です。

テルモ概要

テルモは、「医療を通じて社会に貢献する」という理念を掲げ、100年の歴史を持つ医療機器メーカーです。日本に本社を構え、世界160以上の国と地域で事業を展開、30,000人以上のアソシエイト(社員)が革新的なソリューションを届けるために日々働いています。

国産体温計の製造に始まり、設立以来、医療の基盤を支え続けてきました。現在は、カテーテル治療、心臓外科手術、薬剤投与、糖尿病管理、腹膜透析、輸血や細胞治療などに関する幅広い製品・サービスを提供しています。

テルモは、患者さんや医療従事者をはじめ、広く社会にとって価値ある企業を目指します。

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