
News release
テルモのニュースリリースは、当社企業活動をステークホルダーの皆様にお伝えするためのものです。医療機器や医薬品の情報が含まれることがありますが、これらは報道関係者、株主・投資家等の皆様を対象にした情報であり、顧客誘引や医学的アドバイスを目的とするものではありません。
テルモ株式会社(本社:東京都渋谷区、社長:新宅 祐太郎)は、5月下旬、世界初の心不全治療用の再生医療等製品「ハートシート」を販売開始いたしました。
ハートシートは、患者さんの大腿部から採取した筋肉組織に含まれる骨格筋芽細胞を培養してシート状に調製し、患者さんの心臓表面に移植する製品で、虚血性心疾患による重症心不全の治療を目的としています。
本製品は、患者さんの細胞を採取するためのAキットと、培養した骨格筋芽細胞と細胞をシート化するためのBキットによって構成されており、この度、保険診療1例目の患者さんの細胞採取のため、Aキットを医療機関に向けて販売いたしました。
今後年間20~30例の治療での使用を見込んでおります。
ハートシートは、薬物治療や冠動脈バイパス手術※1などの標準治療で効果不十分な虚血性心疾患による重症心不全の治療の新たな選択肢として期待されています。
※1:詰まった冠動脈に脚などの血管を迂回路として移植する手術
また、厚生労働省が再生医療の実用化を促進するために制定した「条件及び期限付き承認」という早期承認制度が適用になった初めての製品です。
本制度の活用は、再生医療等製品を扱う研究者・企業などから注目を集めており、今後の再生医療の発展が期待されます。
ハートシートを用いた治療の流れ
(参考)ハートシートは、NEDO※2のプロジェクトで大阪大学大学院医学系研究科 心臓血管外科 澤芳樹教授が開発を進め、臨床研究が実施されてきました。当社は、大阪大学との共同研究を進め、先端医療開発特区「スーパー特区」の「細胞シートによる再生医療実現プロジェクト」(研究代表者:東京女子医科大学岡野光夫教授)に参加しました。
※2:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
1.構成体
構成体 | 概要 | キット |
---|---|---|
骨格筋容器 | 医療機関において採取した骨格筋をテルモへ輸送するために用いる組織輸送液が充填された容器。 | Aキット |
血清分離器具類 | 医療機関において採取した血清をテルモへ輸送するために用いるもの。 | Aキット |
凍結保存細胞 | 患者自身の骨格筋芽細胞をテルモで培養して増殖させた後に凍結保存したもの。 | Bキット |
培地類 | 医療機関において骨格筋芽細胞シートの調製を行う際に、解凍した細胞の洗浄、骨格筋芽細胞シートの調製、試験検査に用いるもの。 | Bキット |
シート調製器具類 | 骨格筋芽細胞シートの調製、包装及び試験検査に用いるもの。 | Bキット |
2.効能、効果又は性能
下記の基準のすべてを満たす、薬物治療や侵襲的治療を含む標準治療で効果不十分な虚血性心疾患による重症心不全の治療
<対象とする心不全の状態>
・NYHA心機能分類がⅢ又はⅣ度
・安静時における左室駆出率が35%以下
3.診療報酬上の取り扱い施設基準
(1)植込型補助人工心臓(非拍動流型)の実施施設として届出のある施設であること。
(2)医薬品医療機器法に基づく薬局等構造設備規則又は再生医療等の安全性の確保等に関する法律(平成25年法律第85号)に基づく細胞培養加工施設の構造設備に関する基準に則った細胞培養センターを有すること。
(3)循環器内科の経験を5年以上有する常勤医師及び心臓血管外科の経験を5年以上有する常勤医師がそれぞれ1名以上配置され、これらの医師は所定の研修を修了していること。
(4)定期的に循環器内科の医師と心臓血管外科の医師が参加する、心臓移植を含む重症心不全患者の治療方針を決定するカンファレンスが開催されていること。
(5)関連学会の定める「ヒト(自己)骨格筋由来細胞シートの使用要件等の基準について」において定められた実施施設基準に準じていること。
テルモは、「医療を通じて社会に貢献する」という理念を掲げ、100年の歴史を持つ医療機器メーカーです。日本に本社を構え、世界160以上の国と地域で事業を展開、30,000人以上のアソシエイト(社員)が革新的なソリューションを届けるために日々働いています。
国産体温計の製造に始まり、設立以来、医療の基盤を支え続けてきました。現在は、カテーテル治療、心臓外科手術、薬剤投与、糖尿病管理、腹膜透析、輸血や細胞治療などに関する幅広い製品・サービスを提供しています。
テルモは、患者さんや医療従事者をはじめ、広く社会にとって価値ある企業を目指します。