
News release
テルモのニュースリリースは、当社企業活動をステークホルダーの皆様にお伝えするためのものです。医療機器や医薬品の情報が含まれることがありますが、これらは報道関係者、株主・投資家等の皆様を対象にした情報であり、顧客誘引や医学的アドバイスを目的とするものではありません。
大動脈疾患の「個別化医療」への貢献を目指す
テルモ株式会社(本社:東京都渋谷区、社長:佐藤 慎次郎)は、このたび、医療技術スタートアップの米国アオルティカ社(ワシントン州)*1の買収を決定いたしました。今後、同社製品の開発を進め、米欧日などでの販売を目指します。2019年中の買収手続き完了を見込んでおり、買収資金は手元資金を予定しています。なお、本買収に伴う2019年度のテルモの業績、財務状態に与える影響は軽微です。
アオルティカ社は、通常の腹部大動脈ステントグラフト内挿術*2では治療が困難な複雑症例に使われるカスタムメイドのステントグラフトを自動的に設計する「症例計画ソフトウェア」と、大動脈から分岐した細い血管に留置する「カバードステント」と呼ばれる製品を開発しています。
ステントグラフトは、大動脈瘤の治療を目的として使用される医療機器で、カテーテルにより脚の血管から病変部位に運ばれ、血管内に留置され、大動脈瘤への血流を遮断します。特に腹部の大動脈瘤を治療する場合は、大動脈から枝分かれする腎動脈などがあるため、通常のステントグラフト内挿術を行うには注意が必要です。また腎動脈部付近まで大動脈瘤が及んでいる場合は、通常のステントグラフトでは治療が困難なことが課題です。
アオルティカ社の独自技術により、ステントグラフトに分岐用血管の穴を開けることで、分岐血管への血流を遮断しない「開窓型ステントグラフト内挿術」*3を従来よりも容易に行うことができるようになります。同社の症例計画ソフトウェアは、CTの画像から患者さんの血管走行を読み取り、適切な穴の位置を判断します。このソフトウェアの設計に基づき、その患者さん専用のステントグラフトを製造し、さらに、分岐血管に留置する同社のカバードステントを組み合わせることで、従来はステントグラフト治療が困難だった症例の大動脈瘤治療をサポートします。
ワシントン大学血管外科医のベンジャミン・スターンズ氏が実施した米国における医師主導臨床試験では、この症例計画ソフトウェアを用いた最初の30例全てにおいて、ステントグラフトの埋め込みに成功しました。30例中16例に、テルモの腹部大動脈ステントグラフト「TREO」が使用され、スターンズ氏は、「デリバリー性能や、穴を開けやすいデザインなどから、TREOはこのソフトウェアに最も適合するステントグラフトだ」とコメントしています。
テルモは、英国子会社バスクテック社と米国子会社ボルトン・メディカル社が担う心臓血管カンパニー血管事業において、Terumo Aorticという事業ブランドを展開しています。同事業は人工血管、ステントグラフト、オープンステントグラフトという大動脈を治療する製品群を幅広く持っており、このたびの買収により、大動脈疾患における、患者さん一人ひとりに適した「個別化医療」への貢献を目指します。
※これらの映像はアオルティカ社の製品概要を説明するためのイメージで、臨床での使用とは異なる可能性があります。
テルモの腹部用ステントグラフト
開窓型ステントグラフト(イメージ図)
Aortica Corporation
大動脈瘤の治療法としては、外科的に胸部や腹部を切り開き、瘤を取り除き、代わりに人工血管を縫い付ける手術(人工血管置換術)と、カテーテルにより脚の血管から病変部位にステントグラフトを運び、大動脈瘤への血流を遮断する手術(ステントグラフト内挿術)があり、患者さんの状態によって選択されます。なお、ステントグラフトとは、人工血管(グラフト)に金網(ステント)を縫い合わせたものです。
腎動脈などへ分岐する場所に穴(窓)を開けたステントグラフトを大動脈に留置する治療法。Fenestrated Endovascular Aortic Repair(FEVAR)と呼ばれています。
テルモは、「医療を通じて社会に貢献する」という理念を掲げ、100年の歴史を持つ医療機器メーカーです。日本に本社を構え、世界160以上の国と地域で事業を展開、30,000人以上のアソシエイト(社員)が革新的なソリューションを届けるために日々働いています。
国産体温計の製造に始まり、設立以来、医療の基盤を支え続けてきました。現在は、カテーテル治療、心臓外科手術、薬剤投与、糖尿病管理、腹膜透析、輸血や細胞治療などに関する幅広い製品・サービスを提供しています。
テルモは、患者さんや医療従事者をはじめ、広く社会にとって価値ある企業を目指します。