
News release
テルモのニュースリリースは、当社企業活動をステークホルダーの皆様にお伝えするためのものです。医療機器や医薬品の情報が含まれることがありますが、これらは報道関係者、株主・投資家等の皆様を対象にした情報であり、顧客誘引や医学的アドバイスを目的とするものではありません。
細胞シートを用いた消化器再生医療
長崎大学(長崎県長崎市)とテルモ株式会社(東京都渋谷区)は2019年1月に、消化管の再生医療分野で共同研究講座「消化器再生医療学講座」を開設しました。講座開設のきっかけとなった「自己筋芽細胞シートを用いた消化器再生医療と腹腔鏡デリバリーデバイスの開発」は長崎大学第3期重点研究課題(2017年度から2021年度まで)の一つで、いずれも長崎大学が特許を出願しており、今後臨床研究への展開も視野に入れています。
十二指腸の早期がんを取り除くための治療(内視鏡的粘膜下層剥離術〔ESD〕)の際、腸壁に穴が開く穿孔(せんこう)という合併症を起こしやすくなります。十二指腸は他の臓器と比べて腸壁が薄く、術後の穿孔は約3割で起きます。穿孔が起きれば、消化酵素を含む膵液が腹腔内に広がり腹膜炎などを発症するため、緊急手術になる場合や十二指腸を切除するなどの新たな処置が必要になり、患者の負担も大きいと言われています。
今回、移植・消化器外科学の江口晋教授らは合併症である穿孔予防に細胞シートを使用できないか着目し、研究を始めました。現在はブタ(大型動物)を使って研究を進めています。研究ではブタの脚から骨格筋を採取し、骨格筋由来の筋芽細胞シートを作製。その後、ブタの十二指腸でESDを施術し、十二指腸の外側から細胞シートを貼付しました。移植した場合、穿孔は生じませんでした。細胞シートは自家細胞由来の絆創膏のような役割を果たします。つまり細胞シートがその組織の一部に変化するのではなく、組織に働きかける物質を出して再生を促進すると考えられ、このメカニズムと有効性は今後の共同研究で明らかにしていく予定です。
食道がんの合併症予防で細胞シートを使った臨床研究に実績のある江口教授ら移植・消化器外科と複数の講座(消化器内科 中尾一彦教授、形成外科 田中克己教授、細胞療法部 長井一浩准教授等)が、細胞シートの再生医療製品を開発・販売するテルモと協力して臨床応用を目指します。
今回、共同研究を行うテルモは骨格筋由来の筋芽細胞シート作成の技術を有しています。重症心不全の患者さんの心筋再生手術に使われる「ハートシート」を販売。ハートシートは保険適用がされており、大阪大学医学部附属病院や東京大学医学部附属病院、東京女子医科大学病院など施設基準の届出がされている全国5病院で実施可能です。同技術の消化器分野への応用展開を視野に入れて、新講座を支援します。
内視鏡などを使った低侵襲の治療では細胞シートを臓器まで届ける医療機器が必要です。腹部に1センチほど開けた穴からデバイスを入れ、十二指腸の外膜に細胞シートを貼ります。江口教授らは、長崎大学大学院工学研究科(山本郁夫教授)と共同で腹腔鏡での細胞シートデリバリーデバイスを開発研究しています。
開発中のデリバリーデバイス
テルモは、「医療を通じて社会に貢献する」という理念を掲げ、100年の歴史を持つ医療機器メーカーです。日本に本社を構え、世界160以上の国と地域で事業を展開、30,000人以上のアソシエイト(社員)が革新的なソリューションを届けるために日々働いています。
国産体温計の製造に始まり、設立以来、医療の基盤を支え続けてきました。現在は、カテーテル治療、心臓外科手術、薬剤投与、糖尿病管理、腹膜透析、輸血や細胞治療などに関する幅広い製品・サービスを提供しています。
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