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 公益財団法人京都大学iPS細胞研究財団(本部:京都市左京区、理事長:山中伸弥、以下「iPS財団」)とテルモ株式会社(本社:東京都渋谷区、社長:佐藤 慎次郎)の米国子会社Terumo BCT, Inc.(所在地:米国コロラド州、以下「テルモBCT」)は、iPS細胞培養および分化の自動化を確立するための共同研究を開始することをお知らせします。iPS財団のiPS細胞に関する経験・知識と、テルモBCTの細胞増殖システム「Quantum Flex」(以下「カンタムフレックス」)を組み合わせることにより、将来のiPS細胞を用いた治療のための適切な自動培養工程の確立を目指します。

 iPS細胞は多能性幹細胞の一種です。ほぼ無限に増やすことができ、神経、心筋、血球細胞など、体のあらゆる細胞に分化させることが可能な性質から、将来的に細胞治療分野に大きく貢献することが期待されます。
 一方で、iPS細胞の培養は複雑な手順に基づき専門家が手作業で実施しており、数週間から数カ月にわたる適切な細胞の管理が必要なため、臨床用iPS細胞の製造にかかる莫大な時間と費用が課題となっています。これらの課題を解決するため、iPS財団はmy iPSプロジェクトと題して製造コストを抑えることを目指した閉鎖型自動培養装置の開発に取り組んでおり、テルモBCTも参画しております。
 今回の共同研究では、カンタムフレックスを細胞培養に活用し、iPS細胞の一貫した大規模生産と、汚染リスクが低減された閉鎖環境で細胞培養の自動化とその工程の確立を目指します。

 テルモBCTのグローバルセラピューティックシステムズ・細胞治療テクノロジーゼネラルマネージャーのヴェーラ・ダァーンスは、「今回の共同研究は、iPS財団が持つ世界最先端のiPS細胞に関する知識と、テルモの自動化および細胞増殖に関する専門知識と技術を融合させることで、細胞治療の未来を切り開く素晴らしい機会となります。この分野における先駆者であるiPS財団とコラボレーションできることを大変誇りに思うと同時に、私たちの使命である細胞治療の水準を高めることにも引き続き取り組んでいきます。」と述べています。

 iPS財団 業務執行理事/研究開発センター長の塚原正義は、「iPS細胞の基礎研究等を行っている大学と、治療法開発等を行っている産業界の間で橋渡しの役割を担っている私たちは、常に様々な組織との共同研究によって支えられてきました。テルモBCTとの今回の共同研究は、従来の手作業から、自動化による安定的な細胞製造へと移行するための貴重な機会となります。将来私たちの研究の成果を皆様に共有できることを楽しみにしています。」と述べています。

iPS細胞(人工多能性幹細胞)について

 体細胞を遺伝子導入・タンパク質導入・薬剤処理等により人為的に初期化して得られる細胞または当該細胞の分裂により生ずる細胞です。様々な組織や臓器の細胞に分化する能力を有し、かつ、ほぼ無限に増殖する自己複製能力を維持しています。
 

細胞増殖システム「Quantum Flex」について

 間葉系幹細胞*1(MSC:Mesenchymal Stem Cell)、iPS細胞、T細胞*2など様々な種類の細胞を培養することが可能な閉鎖系自動培養システムです。Quantum Flexは自動化により細胞培養工程を単純化することができ、閉鎖系システムのため培養作業中の汚染リスクを低減することが可能です。また、大小2つの中空糸バイオリアクターにより細胞培養のスケールアップが容易な灌流培養を行うことができ、信頼性の高いソフトウェアによる複数台の装置管理や、GMP順守およびデータ統合にも対応が可能です。
 
*1 骨髄や脂肪組織に存在している体性幹細胞の一つで、様々な細胞に分化していく特徴がある細胞です。細胞分化以外にも、組織の炎症を抑える効果も期待できます。
*2 白血球の内、リンパ球の一種で、異物(がん細胞やウイルス感染細胞など)の排除や他の免疫細胞の働きを調整するなど、免疫の重要な役割を担う細胞です。
 

iPS財団概要

公益財団法人京都大学iPS細胞研究財団は、「社会の先を歩く。患者さんと共に歩く。」を使命として、iPS細胞や関連技術を研究機関・企業へ良心的な価格で提供しており、こうした活動を通じて、iPS細胞の普及・実用化を目指しています。

テルモ概要

テルモは、「医療を通じて社会に貢献する」という理念を掲げ、100年の歴史を持つ医療機器メーカーです。日本に本社を構え、世界160以上の国と地域で事業を展開、30,000人以上のアソシエイト(社員)が革新的なソリューションを届けるために日々働いています。

国産体温計の製造に始まり、設立以来、医療の基盤を支え続けてきました。現在は、カテーテル治療、心臓外科手術、薬剤投与、糖尿病管理、腹膜透析、輸血や細胞治療などに関する幅広い製品・サービスを提供しています。

テルモは、患者さんや医療従事者をはじめ、広く社会にとって価値ある企業を目指します。

プレスリリースは、当社情報をステークホルダーの皆様へ公平かつ適切なタイミングでお知らせするためのものです。文中に含まれる製品情報(開発中のものを含む)は、顧客誘引や医学的アドバイスを目的とするものではありません。
また、業績見通し等の将来に関する記述は、当社が現在入手している情報および合理的であると判断する一定の前提に基づいており、当社としてその実現を約束する趣旨のものではありません。さまざまな要因により、実際の業績等が変動する可能性があることをご承知おきください。実際の業績に影響を与えうる重要な要素には、テルモの事業領域を取り巻く経済情勢、為替レートの変動、競争状況などがあります。