TERUMO STORY エピソードで綴るテルモの歴史 SINCE1921

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金玉火鉢から新しい水銀充填法へ
───良質な体温計づくりに賭ける

時間がたつと狂いが生じる体温計をなんとかしたい

テルモの歴史を刻んでいる基準器(大正12年ドイツ製) テルモの歴史を刻んでいる基準器(大正12年ドイツ製)

いま、テルモの体温計は電子体温計が主流です。けれども、電子体温計が開発されるまで主流を占めていたのは、水銀の膨張率をガラス棒に刻印された目盛りで読み取るアナログの体温計でした。1921(大正10)年に設立されたテルモの前身・赤線検温器株式会社が製造していた体温計も、もちろん水銀体温計でした。

創業期の水銀体温計は、いろいろな問題点を抱えていました。そのひとつに、時がたつと体温計に狂いが生じることがあります。「経年変化をなんとかしたい」と考えた技術者たちは研究を重ね、「ガラスを加工する際に、加熱してから急激に冷却することによって生じる」ことが原因だという結論に達しました。

そこで、ガラス分子の不整形配列を是正する方法を考案し、年月を経ても変化を起こさないようなガラスを製造することに挑戦したのです。当時、ドイツでつくられた標準ガラスは、3年間で1000分の59度の経年変化を起こすのに対し、テルモの体温計のガラスは、1000分の7度しか経年変化を起こさなかったのです。

砂を加熱、冷却して、ガラスのひずみを取り去る

「体温計水銀充填法」特許明細書 「体温計水銀充填法」特許明細書

もうひとつ、創業期に重要な製造技術の改革が行われました。それはガラス管に水銀を入れる新たな方法の開発でした。当時の水銀充填法は、まず細いガラス管(毛細管)の上部に、ロート(円筒形のガラス容器)を取り付け、これに水銀を入れて水銀の槽部を火鉢の熱した灰にさし込みます。すると、ガラス管の中の空気が膨張して上部に排出され、これを火鉢から取り出すと、管の中に残っていた空気が冷えて収縮し、ロート内の水銀が吸い込まれるという方法でした。

このとき、体温計づくりの職人がこの火鉢を両脚でかかえながら作業したのですが、この格好から俗に「金玉火鉢」と呼ばれていました。なんとも、ちょっと滑稽で、前近代的な水銀充填法だったのです。

もっと近代的な工業生産手法をあみ出したいと、テルモの生産技術者はさまざま工夫を重ねました。そして開発したのは、密閉容器に熱した砂を入れ、その砂にガラス管の水銀槽を差し込んで熱を与え、空気を抜きとって、冷却時の減圧によって水銀の充填を行うという方法でした。

この水銀充填法では、砂を使うことによって加熱と冷却をゆるやかに行うことができ、従来の方法では不可能だったガラスのひずみを除去することに成功したのです。これは体温計製造史上に残る発明で、後に真空ポンプによる水銀充填法が開発されるまで、ずっとこの方法が使われました。

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