助成先一覧

2016年度

選考委員会講評

芸と云う括りでならば同じではあるが、工芸の分野では門外漢である私がこの審査員を簡単に引き受けて、幾分戸惑った感はあった。事前に頂いた3種の申請書を拝見し、熟読してみると我が伝統芸能の世界と同じ悩みを抱えている事を先ず感じた。その視点観点からこのプロジェクトの意義と、審査員としての責任と自覚を以って臨んだ。漆工芸・染織・仏像美術の3分野のいずれも伝承継承の危機感を憂慮し真摯に向き合い取り組みに我が世界と重る。故に審査は苦衷の選択でもあった。結果としては全申請中、最善のプロジェクトが選ばれたと思う。来年度もこのプロジェクトが、風前の灯火の消滅しそうな伝統芸の伝承に尽力する方の一助になり、遍く日本の危機を救う存在である事を願う。また多くの個人団体の申請を期待する。

重要無形文化財保持者 十一世鶴賀流家元
鶴賀 若狭掾

昨年に続き、漆芸、染織、仏像美術の3つのジャンルの後継者の育成、作品制作、伝統工芸の普及を目的とする活動等に対する助成を審査させていただきました。前回も感じたことですが、特に漆芸、染織は日本全国津々浦々、独自のものが存在し、その多様性と、若い世代のそこからさらに新しいものを作りだそうという意気込みを喜ばしく感じました。と同時にまさに今、保存、継承に向けての行動を起こさなければ自分たちの代でそのかけがえのない伝統が消えてしまうという切迫する危機感からの声も多く聞こえてきました。よって、審査の選択は苦渋の決断でしたが今回は緊急性を重視した審査結果で、今まさに必要とする支援を提供する結果になったと思います。

特に今年の特徴として日本産の漆の植林や、漆の樹液を掻く道具や丹後ちりめんを作る蚕の食する桑の栽培に関する研究など、伝統工芸の技の継承以前の原材料や道具の確保や継承に対する助成申請が複数見られました。それぞれの地の豊かな自然の恵みから生み出されてきた日本の伝統工芸ならではで、緊急のしかし気の遠くなるような道のりです。伝統工芸の継承とその発展には余りにも多くの課題がありますが、日々尽力されている方々の一助となれればと願います。

一般社団法人アーツアライブ 代表理事
尚美学園大学大学院芸術情報研究科 准教授
林 容子

漆芸、染織、仏教美術の3つの領域での助成応募の審査をさせていただきました。過疎化・高齢化が進む地域からも、未来の希望を託した数多くの応募をいただき頼もしい限りでした。

今回の応募には、素材そのものの理想を追い求める情熱に溢れ、その探究の物語に心が躍り、事業の完成が楽しみな事業、小さくとも輝くオンリーワンを持つ事業を見いだすことができました。当然ながら、決定された事業は、結果ではなく、これから申請者、そして地域内外で協力・協働された皆様方が力を合わせ、萌芽的な事業も、大切に育て、花を咲かせる出発点に立っています。どうか、この助成の機会を大切にして、自他ともに励まし、創造的なプロセスと良き成果によって、多くの人々に大きな喜びを届けていただきたい、と思います。そのことで、今後、助成プログラムも進化していきます。素材・技術の開発、そして次世代型の発想も含めた協働事業や地域と一体になった流通や普及システム開発の提案なども、望まれるところです。皆様方のご健康と更なるご活躍をお祈りしつつ、次なる小さくとも輝くオンリーワンを持つ事業提案を期待しています。

東京藝術大学美術学部先端芸術表現科
同大学院美術研究科グローバルアートプラクティス専攻 教授
たほりつこ

漆工芸

申請者・団体名 プロジェクト・事業名 助成金額
NPO法人壱木呂の会
本間 幸夫
漆掻き用具の詳細記録と存続へ向けて 100万円×2年
中岡 庸子 伝統技法「加賀蒔絵」を用いた天然石への加飾を施した作品制作 100万円
株式会社浄法寺漆産業
松沢 卓生
国産漆の新たな採取法の実証研究 100万円
染谷 聡 漆絵をめぐるフィールドワークと製作 50万円

染織

申請者・団体名 プロジェクト・事業名 助成金額
須藤 真美子 加賀友禅とはなにか いまのかたち 100万円
株式会社あきやま
秋山 眞和
原種養蚕ならびに糸絣紬織物製作技術伝統事業 100万円
株式会社東郷織物
谷口 邦彦
国の伝統工芸品「本場大島紬」織り人、指導者の育成 50万円

仏教美術

申請者・団体名 プロジェクト・事業名 助成金額
身延山大学東洋文化研究所仏像制作修復室
柳本 伊佐雄
『仏像彫刻の基礎』教材映像化プロジェクト 100万円
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