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日本で開発し、世界で実用化。
価値ある医療機器を早く届けたい。

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「よりよい治療の選択肢を、いち早く臨床医に届けたい。」それが、日本で開発した医療機器であっても、まずヨーロッパで承認を取ることが多い理由だ。Dr. Paunovicはテルモ製品の臨床開発が集中するヨーロッパで、医師として優れた手腕を振るっている。

Dragica Paunovic, M.D.
フェロー
テルモヨーロッパ社 Chief Medical Officer

医師としてテルモに入社した経緯

Dr. Paunovicはセルビアで免疫血液学のスペシャリストとして臨床医をしていたが、1994年にオランダで輸血関係の学会が開催されたとき、ベルギーにあるテルモの工場を見学する機会があった。そのときテルモが、患者さんの安全を非常に細かいところまで考えて医療機器の生産に取り組んでいることを知り、大きな感銘を受けたという。彼女がテルモに入社したのは、その翌年だった。テルモはヨーロッパで臨床開発を強化する必要があったため、医師としてそのチームを牽引するのが大きな役割となった。

臨床開発とは、どのような仕事か

医療機器は、国から製造販売の承認を受けて市場に出されるが、その承認を得るために医療機器の安全性と有効性を非臨床試験、および必要とされる製品については臨床試験から確認する必要がある。臨床試験に際しては、試験を依頼する医師・医療機関を選び、事前に定められた臨床試験計画書に基づいて臨床試験を実施し、試験結果をまとめて、非臨床試験結果と共に承認申請を行う。また承認を得た後には、大規模レベルでの安全性を確認したり、さらなるサイエンティフィックなエビデンスの取得や適応例の拡大を目的とした臨床試験を実施する場合もある。

よりエビデンスの高い臨床試験が役立つとは

動脈硬化などの影響で、狭くなった心臓の冠動脈を拡げ、さらにその部分が再び狭窄(きょうさく)することがないよう治療する薬剤溶出型冠動脈ステントという医療機器を新たに開発したときの話である。ヨーロッパと日本で安全性や有効性を他社品と比較したグローバルで大規模な臨床研究を実施し、その結果をパリの権威ある学会で発表すると同時に、医学誌などにも掲載した。そしてその2ヵ月後、欧州心臓病学会が診療ガイドラインを発表し、テルモの新しい薬剤溶出型冠動脈ステントをエビデンスレベルの高い機器のひとつとして掲載した。ガイドラインは臨床医の標準的な治療指針となる文書であり、機器の選択にも大きな影響を与えるため、その波及効果は大きかった。

テルモという企業で働くモチベーション

テルモは医師たちによって設立されたという歴史*を持つ企業であり、製品開発の中心に常に患者さんの安全と患者さんがよりよく生きることを大切にする文化として残されている。そのことは医師としての自負に沿うものであり、彼女は初期段階から開発プロジェクトに入り、ディスカッションに参加し、患者さんと医師の立場から懸念を表明したりアドバイスを提供したりするという面を見せる。常に医師としての活動を意識しながら、いつも患者さんのことを考える存在であり続けているのだ。

  • テルモは、第一次世界大戦の影響で輸入が途絶えた体温計を国産化するために、北里柴三郎博士をはじめとする医師らが発起人となり、1921年に設立された。

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薬剤溶出型冠動脈ステントの
薬剤放出イメージ

薬剤溶出型冠動脈ステントによる治療

ステントは、心臓の周りの細い血管(冠動脈)が狭窄(きょうさく)したり、閉塞したことによって起こる狭心症、心筋梗塞などの治療に使用する埋め込み型の治療機器。血管内でふくらむバルーンカテーテルで冠動脈を拡張した後に、ステントを血管内に留置するが、留置後に再び狭窄を起こすリスクを低減するために、治療には薬剤溶出型冠動脈ステントが多く使用される。