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「衛生思想」を普及させた、国産の体温計
病院で診察を受けるとき、多くの場合は最初に体温を測ります。体温を知ることが、体調を知る第一歩だからというのが理由ですが、これは今も100年前も変わりません。そんな医療の基本が危機にひんしていたのが、テルモの創業した1921年でした。
当時の日本は体温計の多くをドイツやイギリス、アメリカなどからの輸入に頼っていましたが、第一次世界大戦の勃発にともなって供給が途絶してしまったのです。
そこで、北里柴三郎博士らを発起人として、良質な体温計を国産化するという計画が立ち上がりました。これがテルモの始まりです。
小さな町工場で生産されていた「赤線芯入り着色体温計」を原型として改良を進め、当時の課題だった計測精度の経年劣化も、ガラス分子の不整形配列を是正するという独自の技術で克服。海外でも高い評価を獲得します。
また、病院で使うものという認識が一般的だった体温計は1920年代を通じて、家庭にも広く普及。熱が出たら外出を控える、体温を測って健康管理をするという生活様式が、こうして多くの人々に浸透していくことになります。
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テルモの体温計の歴史を刻んだ基準器
(1923 年 ドイツ製。温度を正確に計るとき、
その基となる基準ガラス製温度計)
医療現場から「感染」をなくしたい

予防接種や薬剤投与などの場面で用いられ、誰もが接したことのある身近な医療機器「注射器」。今では使用するたびに新しいものに取り替えられていますが、これも数十年前までは異なっていました。注射器や注射針は、消毒しながら使い回されていて、肝炎などが広がる原因にもなっていたのです。
この問題を解決したいと考えたテルモは、1950年代から「単回使用の注射器」の開発に着手します。
素材はプラスチック。従来のガラスとは異なり、製造時に高温の滅菌を行うことができません。開発は困難を極めましたが、海外の調査機関や専門家のアドバイスも得て、新たに医療機器に適した低温ガス滅菌の方法を実用化し、1963 年に日本で初めて発売しました。
続いて、輸血用血液や輸液剤の容器のソフトバッグ化にも取り組みます。
外気で内容物を汚染してしまう可能性のある通気針を必要としない、これらの製品が普及していくことで、医療の現場における感染リスクは大きく低減しました。

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    日本初、単回使用の注射器

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    日本初の血液バッグと、輸血セット

命を救うことへの、熱い想い

国産の体温計や単回使用の注射器など、現代の医療のスタンダードをつくってきたテルモが次に挑んだのは、人間の生命活動を支える医療機器の開発でした。
1977年にこの領域で初めて発売した製品は、「人工腎臓」。重い腎臓病の患者さんの血液を体外に取り出し、老廃物を除去した上で戻す人工透析に使われるものです。人工腎臓で培われた技術は、後に手術中の患者さんの肺に代わってガス交換を行う世界初の「多孔質ホローファイバー型人工肺」へと発展。これをルーツとする体外式膜型人工肺(ECMO: Extracorporeal membrane oxygenation)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による重症呼吸不全の患者さんにも使用され、未知の感染症と闘う患者さんにとっての希望となりました。
さらにテルモは「人工心臓」の開発に着手します。心臓手術などの際、心臓と肺の役割を一時的に担う人工心肺装置に使われた遠心ポンプ技術を応用し、血栓の発生を防ぐ技術も導入。決して止めることのできない心臓を代替できるだけの耐久性と信頼性を備えること、そして血液損傷を最小限にすることを追い求めた「埋込み型左心補助人工心臓」を製品化しました。
常に新しい技術を生み出し、一人でも多くの人の命を救う。テルモの信念は、これまでもこれからも、決して変わることはありません。

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    世界初の多孔質ホローファイバー型人工肺

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    体外式膜型人工肺(ECMO)

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    埋込み型左心補助人工心臓

命と向き合う医療従事者と共に

医療従事者の力になりたいという強い意志。それはテルモのあらゆる製品やサービスに貫かれるものです。製品の開発においては、医療従事者が患者さんの治療やケアに集中できるよう、機器を安全に安心して使える優れた操作性も追求。注射器、点滴器具を安全に接続できるクローズド輸液システムや、医療安全につながるプレフィルドシリンジ(薬剤充填済み注射器)、医療従事者を抗がん剤のばく露から守る製品などを通じ、最前線で命と向き合う人々を支えています。また、医療現場のニーズに応じた実践的なトレーニングも提供。機器の正しい使用法の理解、新たな手技の習得などをサポートするとともに、ここで把握した現場のニーズを、製品、シミュレーター、トレーニングプログラムの開発・改善などに役立てています。テルモは今後も医療従事者の近くで、共に歩む存在であり続けます。

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    クローズド輸液システム

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    プレフィルドシリンジ(薬剤充填済み注射器)

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    テルモメディカルプラネックスで、医療従事者向けのトレーニングを提供

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    テルモメディカルプラネックス