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健康ガイド

“かくれ糖尿病(食後高血糖)”の早期発見の必要性とスクリーニング法

1.かくれ糖尿病(食後高血糖)とその早期発見の重要性

図1

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“かくれ糖尿病”とは、糖尿病であるにも関わらず、健診などのスクリーニング検査で捉えられていない糖尿病のことです。その数はかなり多いと推測されており、実際に糖尿病にかかっている方のうち、糖尿病と診断されている方は半分にすぎないとも言われています。特に本日は、国際的にもガイドラインができて大きな流れとなっている「食後高血糖」について、私の教室で検証した新しいスクリーニング法を絡めてお話したいと思います。
さて、厚生労働省が行っている国民健康栄養調査によれば、2007年現在で、糖尿病が890万人、予備軍は1320万人で合計2210万人。日本で非常に多くに人が糖尿病もしくは予備軍であるということが明らかになりました。
日本糖尿病学会の糖尿病患者の平均寿命に関するデータ(図1)によれば、糖尿病にかかった男性は10年、女性は13年、普通の人に比べて寿命が短いとされます。血糖値が悪い人はもちろんそれよりも短く、15-20年早く亡くなる方もおり、糖尿病の生命・寿命に対するインパクトは非常に大きいと言えます。

2.早期発見・早期診断が重要な理由

なぜ糖尿病が問題かといえば、網膜症や糖尿病性腎症といった細小血管症や心筋梗塞などの大血管障害など、重大な慢性合併症が起こることにつきます。ご存知の通り、これらを予防するには血糖をコントロールすることが非常に重要です。ではどれくらい、病気のどの段階から実施すればいいか。大規模臨床試験であるDCCTやUPKDSのデータを組み合わせて考えるに、できるだけ厳格に、できるだけ早期から血糖コントロールを行うべきということが導き出される。なぜなら、早期の治療の効果は、20年後、30年後まで影響して、合併症を予防している可能性が高いことが最近の研究で示唆されているからです。

3.「食後高血糖の糖尿病予備軍=糖尿病」と考えるべき

図2

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なるべく早く、というのは、糖尿病と確定診断する前、つまり糖尿病予備軍からスクリーニングして治療に入る方が更に望ましいということが分かってきています。
一般的に、糖尿病の人は心血管病の発症リスクが正常に比べて約3倍です。ところが、糖尿病では、その予備軍段階であっても、ブドウ糖負荷後に高血糖がある人、「食後高血糖」とされるタイプは、食後の血糖が上がれば上がるほど、心筋梗塞のリスクが上がり、累積生存率が下がることがわかっています(図2)。IGT(Impaired Glucose Tolerance)と言われている耐糖能異常、つまり食後高血糖がある糖尿病予備軍は、心血管病での死亡率が正常の人と糖尿病の人の中間くらいあります。また、久山町研究では、IGTと言われている食後高血糖がある予備軍は、心血管病の発症率はノーマルな人の2倍です。
このことから言えば、食後高血糖の糖尿病予備軍というのは、実はもう糖尿病という病気の範疇に入っていると考えたほうがいい。一方、IFG(Impaired Fasting Glucose)と呼ばれる、食前に血糖が高いタイプは、普通の人と死亡率が変わりません。

4.空腹時血糖では診断できない初期の糖尿病

図3

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実際にCGMS、24時間の血糖モニタリングシステムというものを使って、患者さんのお腹に針を刺して24時間の血糖をモニターすることができます(図3)。
一番下の青い線は、HbA1Cが6.5%未満の人の平均の血糖値の推移を見たものです。正常な人は食後でも140 mg/dlを越えることはありません。
HbA1Cがやや高い6.5-7.0%(赤の線)の人でも、全体は高くなりますが、やはり空腹時血糖はあまり上昇せず、食後に高血糖をきたしています。平均すると、食前は126 mg/dl未満で、糖尿病の診断はつきません。ところがHbA1Cは糖尿病基準の7%近くあるということになります。
さらに上がって7-8%(緑の線)では、食後血糖は200mg/dlぐらいまで上がっていますが、空腹時血糖は大して上昇せず、126mg/dl未満の人が多いと推測されます。この結果、空腹時血糖でのスクリーニングでは、なんとHbA1Cが8%近い人も見逃してしまう可能性があるということになります。
HbA1Cのパーセンテージがこれ以上、上がってくると、ようやく空腹時血糖が126mg/dlを超えてきます。つまり、食前で血糖が上がってくるのは相当進行した人と言えます。食前血糖値126mg/dl以上という、現在の健診や特定健診で行われている基準でのスクリーニングでは、早期の糖尿病はほとんどつかまえられないという、ややショッキングな結果といえます。

5.尿糖試験紙を用いた、かくれ糖尿病のスクリーニング実験

図4

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それでは、現実的に食後の血糖を測る有用な手立てはあるのでしょうか。
まず、指先の血をとるタイプの血糖測定器があります。これは非常に優秀で、病院の大きな測定器と精度がそれほど変わりません。とても軽く、慣れればかなり簡便に測定ができるため、すでに診断のついた糖尿病の人が血糖をモニターするには非常に有効といえます。ただし、糖尿病でない人、つまり継続的に血糖を測る必要がないと言われている人に、血糖測定器を購入して、指を針で刺して血糖を測ってくださいというのは、現実的ではありません。
そこで今回、私の教室では、食後血糖の測定法としての尿糖試験紙の有用性を検証してみました。尿糖試験紙は、尿をかけたり、コップにためた尿に浸すと、色が変わって尿中の糖を調べることのできる検査紙で、10枚入り700円程度と、薬局できわめて安価に入手できるため、一般の方の自己測定にも向いています。仕組みの部分で言えば、血糖はある程度の数値(160~180mg/dl)を超えると尿中にでてくるため、食後の尿糖を測ることによって、簡易的に食後の血糖を測定することと同じ効果が期待できます。試験紙にはテルモ社の新ウリエースGaを使いました(図4)。一般の薬局で売っている尿糖試験紙の97-98%が新ウリエースシリーズだからです。
検証は、糖尿病と診断されていない555名を対象に、尿糖が陽性かどうかを食後に自宅で測定してもらい、結果、陽性の出た方に対して、実際に糖尿病かどうかを測定するためのブドウ糖負荷試験(GTT)を受けてもらいました。同時に、特定健診の基準である、空腹時血糖(FPG)が100mg/dl以上、あるいはHbA1Cが5.2%以上の方もブドウ糖負荷試験を受けてもらいました。

6.試験結果のまとめと総括

尿糖試験紙で判明した尿糖陽性のうち、実際に食後高血糖タイプの糖尿病あるいは糖尿病予備軍の人が半分くらいいることがわかりました。また、特定健診の基準をクリアしている人で、尿糖だけがプラスであった人の約4割が、実際に糖尿病あるいは糖尿病予備軍でした。つまり、通常の検査で実施される空腹時血糖だけでは捕捉できない糖尿病やその予備軍を、尿糖試験紙で捉えることができる可能性が高い、といえます。
ここから我々が出した結論は、1.食後尿糖検査は、簡便で、自宅で誰もがくり返し行え、耐糖能異常者のスクリーニングにも有効であるということ2.空腹時血糖値やHbA1Cで見逃される症例の診断に有用であるという2点です。特に、日本人は肥満でなく、食後に血糖が上昇するタイプの糖尿病が多いため、食後の尿糖をチェックすることの重要性は高い。尿糖試験は、安価・簡便にもかかわらず、食後高血糖を捕捉するのに有用のため、医療関係者にとっても、個人にとっても低コストでメリットの大きい、使い勝手の良い検査といえます。また、薬局で簡単に入手できるので、健診で空腹時血糖が正常といわれた方でも、気軽に手にとって尿糖検査をしていただき、1人でも早期発見がなされることを望みます。
ご静聴ありがとうございました。